『三匹の子豚』の結末は
グリム童話は、本当は結構残酷だというのは知られていることでしょう。『シンデレラ』しかり、『赤ずきん』しかり。
『三匹の子豚』も、一番目と二番目の子ぶたはオオカミに食べられてしまい、三番目の子ぶたは逆にオオカミを鍋で煮て食べてしまいます。
そこら辺を現代の世界感で表現したのが、イギリスのニュース誌『The Guardian』のCM動画。
もうずいぶん昔の動画ですが、とても秀逸です。
「Cannes Lion Award-Winning "Three Little Pigs advert"」
ちゃんと3匹そろっているので、お兄ちゃんたちはオオカミに家を吹き飛ばされた後、生きていて、末っ子の家に避難したバージョンと思われます。
オオカミを煮て食べたことは是か否か
動画は、3匹の子ぶたたちの家に警官隊が乱入してくるというショッキングな場面から始まります。
オオカミが生きたまま茹でられたことに対し、警察が動いたわけです。子ぶたたちの逮捕に関して、世論はいろいろ。
The wolf blew down two houses, he got what he deserved.
(オオカミは2件の家を吹き飛ばした。自業自得だ)
A get what A deserve の直訳は「AはAに値するものを得る」、つまり「自業自得」。deserve what's coming to A でも同じです。
deserve は「何か良いことを受けるにふさわしい」といった時にも使いますが、このフレーズでは「悪いことをした報い」という用法。
- He did wrong, and he got what he deserved.
(彼は悪いことをしたのだから、自業自得だ) - Let's just say they deserve what's coming to them.
(自業自得と言っておこう)
ぶたたちの行為を、是とする意見もあれば、否とする意見もあり。
The pigs went too far.
(ぶたたちは、やり過ぎだ)
go too far は「やり過ぎる」。制限を超えて、やり過ぎることを表します。
- I didn't mind at first, but now you've gone too far.
(最初は気にしなかったが、今はやり過ぎだよ) - If you go too far, I'll slap you.
(行き過ぎたらひっぱたくよ)
オオカミは喘息持ちだった?
実は、オオカミは吸入器(inhaler)を使用していたことが明らかになりました。オオカミは喘息(asthma)を患っていたという記事が『ガーディアン』に載ります。
自然な自社宣伝になっていて、広告として本当に上手い。
There's no reason why those two houses, one made from straw the other from wood, should have collapsed.
(あの2つの家が倒壊するわけがない。1つはわらの家で、もう1つは木の家だ)
Not even a healty wolf's huff and puff could bring them down.
(健康なオオカミでさえ、息を吹いて壊すことはできないだろう)
ひとつずつ見ていくと、there's no reason why は「~の理由がない」「~のわけがない」。
There's no reason why those two houses should have collapsed という文に、one 以下で those two houses についての説明が挿入されています。
the other は「最後に残ったひとつ」。
何かが2つだけしかない場合、片方が one だとすれば、もう1つは必然的に the other になります。
not even は「~さえない」。家を息で吹き飛ばせるはずがないという、童話から離れた非常に現実的な結論に至りました。
huff and puff の意味
ここでは名詞になっていて、童話のオオカミの台詞 “Then I'll huff and I'll puff and I'll blow your house down.”(それなら、ひと吹きでおまえの家を吹き飛ばしてやる)を意識した描写になっています。
イディオムとして、huff and puff は「疲れてゼイゼイハアハアと息をする」、または「(状況を変えようとせず)ただ不機嫌さを示す」の意味。
- He came up the stairs huffing and puffing.
(ジョンはハアハア言いながら階段を上がってきた) - After much huffing and puffing, he finally agreed to help.
(たいそう不機嫌だったが、彼はついに手伝うことに同意した)
huff and puff は韻を踏んだイディオムですが、もともと huff は「怒りに任せて息を吐く」、puff は「プッと短く息を吐く」です。
bring down の意味
bring down はちょっと意味が想像し難いかもしれません。bring は「持ってくる」として、それに down が付くと?
意味はたくさんあるものの、基本のイメージは「何かを高い位置から低い位置へ持ってくる」こと。
そこから「失墜させる」「着陸させる」「(値段を)下げさせる」「落胆させる」「撃ち落とす」「打ち倒す」などなど、数多くのパターンで使われます。
- The scandal may bring down the government.
(スキャンダルは政府を崩壊させるかもしれない) - That tower is so strong that no wind could bring it down.
(あの塔はとても頑丈で、風でも倒せない)
諸悪の根源は政府?
動画では、結局家が吹き飛ばされたのは、オオカミのせいではなく、子ぶたたちの inside job(内部の者による犯行)だったと判明します。
3匹の子ぶたは、保険金詐欺をもくろみ、家を自ら壊したとのこと。そのカモフラージュのために、オオカミに罪を着せたというとんでもない結末です。
子ぶたたちの犯行の動機は、住宅ローンの返済に苦しんでいるという経済的なものでした。このことで、同じようにローンの返済に苦しむ多くの人々が鬱憤を爆発させます。
The banks made the pigs do it!
(銀行のせいで、ぶたたちがそれをした!)
人々はそんなプラカードを掲げて抗議し、ついに暴動へと発展。議会も動かざるを得なくなるというのがCMの着地点です。
たった2分の動画中に、これだけのものを詰め込んでます。凄すぎる。
元記事 被告は3匹の子ぶた 子ぶたが遂に逮捕される をリライト
(引用・参照元: Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary)