「買う」の意味の buy
ご存じのように、buy は「買う」です。でもそれだけじゃなく、意外と奥が深い単語です。
buy は、S+V+O(~を買う)の第3文型も、S+V+O+O(…に~を買う)の第4文型も取れます。「買う」も実は、こんな使い方があったりします。
buy off(買収する)
buy off+人(または buy 人 off)で「人を買収する」。off がないこともあり、よく受身形にもなります。
- They tried to buy the guard at the bank off but he told the police and the gang was arrested.
(彼らは銀行の警備員を買収しようとしたが、警備員が警察に通報し、一味は逮捕された) - A well-known business executive had bought off government inspectors.
(ある有名企業の重役が、政府の検査官を買収した) - He can't be bought.
(彼は買収されない)
ただ buy off は必ずしも「買収する」の意味ではなく、buy 物事 off~ は普通に「~から(~で)物事を買う」です。
- She bought it off eBay for $50.
(彼女はeBayで50ドルで買った)
「物」が主語になる場合
「物(特にお金)」が主語になる時は、「何かを買うのに十分なもの」の意味です。
- A few dollars will buy you a book that holds the experience of a lifetime.
(数ドルで一生の思い出になる本が買える) - There are some things money can't buy.
(お金で買えないものもある)
「信じる」「受け入れる」の buy
「買う」が転じて「信じる」「(真実として)受け入れる」の意味になるのは、なんとなく納得できるのではないでしょうか。
ただ、話し言葉なので、文章やフォーマルな場では使いません。“I'll buy that.”(賛成です)のように言うことが多いですね。
- The officer didn't buy my lame excuse for speeding.
(警察官はスピード違反に対する私の下手な言い訳を信じなかった) - You could say you were ill but I don't think they'd buy it.
(病気だったと言うこともできるが、彼らがそれを信じるとは思えない)
buy into(受け入れる)
buy into は「~の株を買う」の他、口語で「受け入れる」の意味もあります。
- She had never bought into the idea that to be attractive you have to be thin.
(彼女は、魅力的であるためには痩せていなければならないという考えを受け入れなかった) - Parents are expected to buy into the school's philosophy.
(保護者は学校の理念に賛同することが求められる)
「死ぬ」の意味の buy it
buy it はスラングで「死ぬ」「殺される」です。
といっても、先程挙げたように「受け入れる」の意味でも使うので、前後関係が分からず “I'll buy it.” だけ言われたら、判断がつかず困ってしまいます。
このフレーズは、第一次世界大戦中に軍事スラングとして生まれたとか。もとは事故や軍事行動で命を落とすことを、buy it と表現したようです。
なぜそうなったかは、明らかになっていません。
- By the time we could get to the hospital, he had bought it.
(病院に着くまでに、彼は死んでいた) - He lay there coughing for a few minutes, and then he bought it.
(彼は数分間咳き込みながら横たわっていて、死んだ)
buy the farm(死ぬ)
「死ぬ」という意味の buy the farm というイディオムがあります。この直訳は「農場を買う」。
- If you crash at 60 mph, the odds are you'll buy the farm.
(時速60マイルで事故を起こせば、死ぬ確率が高い)
buy it を経て、1950年頃から buy the farm というイディオムが出てきたそう。これもやはり軍隊由来の表現で、2通りの説があります。
多くの軍人は、市民生活に戻ったら故郷の農場を買うか、自分か両親が所有した農場のローンを完済するだろうと考えていました。
死ぬことは文字通り引退することであり、そのため戦闘犠牲者は「農場を買った」と言われたとのこと。
もうひとつは、アメリカの農村地域上空を訓練飛行する軍用パイロットのことを指しているという説です。
時折、パイロットが墜落して農家の土地に損害を与えることがあり、その農家は住宅ローンを完済できるほどの金額を賠償請求しました。
墜落事故でパイロットは亡くなり、パイロットは自分の命で「農場を買った」と言われたとか。
buy が「賠償請求される」ことを意味したのは、1930年代以降です。
(引用・参照元: Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary, Cambridge Dictionary)