『スヌーピー』に出てくる「殴る」
ボクシング以外で人を殴るのは、ダメダメです。それでも「殴る」という単語はとっても多いです。
『PEANUTS(スヌーピー)』に、Floyd(フロイド)という男の子がMarcie(マーシー)にひとめぼれして、ラブアタックする話があります。
マーシーはまったく取り合わず、いつも彼を殴り倒したり突き飛ばしたり突き落としたりするものの、フロイドは凝りません。
hit と clobber
やり過ぎ感のあるマーシーにPeppermint Patty(ペパミント・パティ)が言います。
You've hit him with a first-aid kit, clobbered him with a lunch tray, pushed him into the lake and shoved him into a patch of poison oak!
(あなたは彼を救急箱でぶって、ランチ皿で殴って、湖に突き落として、ウルシの中へ突き飛ばしたのよ!)
- hit: 打つ、ぶつける
- clobber:(俗)ひどく打つ、激しく何度も打つ
hit は、come upon(偶然出会う、行き当たる)を意味する古英語から来ているとか。一番一般的ですね。
clobber は「打ちのめす」といった感じで、かなり強い言葉です。戦時中の空軍のスラングらしく、語源ははっきりしません。
「殴る」とは少し違うけれど、push は「押す」「突く」、shove は「荒々しく押す、突く」。
slug
You can't slug somebody for calling you “Lambcake”!
(「ラムケーキちゃん」て呼ばれたからって殴っちゃだめよ!)
- slug: 強打する、ぶん殴る
slug は名詞だと「ナメクジ」の意味もありますが、ここでは動詞です。特に、グーで殴る時など。よく似た slog という語も「強打する」です。
slug と slog は何らかの関連がありそうだけれど、どちらも由来は不明です。
ところで、この「ラムケーキ」は rum cake(ラム酒入りのケーキ)ではなく、lamb cake(子羊のケーキ)になってます。
これは、子羊の肉入りケーキ…ではなく、子羊の形のケーキ。イースターの伝統的なデザートです。
pound と whap
こちらは、マーシーの台詞。
Pound him, sir!
(彼を殴ってください)
Whap him with a waffle. sir!
(彼をワッフルで殴ってください)
- pound: 音を立てて、何度も激しく打つ
- whap:(俗)強く打つ
pound は、ガンガン、ドンドン、バンバンと音を立てて叩くイメージです。whap(または、whop)は、「激しく打つ」。バシッ、ボカッと打つ感じ。
他の「殴る」の単語
ざっくりしたイメージでは、「打つ」は意図的でなく「ぶつかる」場合もあって、比較的穏やか。「叩く」は「手でバシッと打つ」、「殴る」は「拳で打つ」ような感じでしょうか。
「打つ」「叩く」「殴る」は、人に対しても物に対しても使いますね。上で挙げた語だけでなく、他にも「打つ」「殴る」の意味ではこんな単語があります。
beat と batter
- They beat him unconscious.
(彼らは彼を殴って意識を失わせた) - He had been badly battered around the head and face.
(頭や顔をひどく殴られていた)
- beat: 何度も繰り返し打つ
- batter: めった打ちにする(特に、重大なダメージを与える場合が多い)
beat は、心臓の鼓動のように何度も強く打ち付けること。batter は beat から来た語で、野球の「バッター」も、この batter です。
beat at(~を打つ)、batter at(~を打つ)など、前置詞を伴う場合もあり。
hammer
- She hammered the nail into the wall.
(彼女は釘を壁に打ち付けた) - He hammered the door with his fists.
(彼は拳でドアを叩いた)
- hammer: 何度も音を立てて暴力的に打つ
hammer は名詞だと、あの道具の「ハンマー」です。動詞では、「ハンマーで打つ」場合と、ハンマーを使わずに「激しく何度も打つ」場合にも使えます。
hammer at(~を打つ)の表現もあり。「何で」打つのか言いたければ、with で示せばOKです。
hammer と pound はあまり意味の違いはないものの、どちらかというと pound のほうが安定した動作を示します。
hammer は、やはりハンマーのイメージゆえか、暴力的な感じがあります。どうしても、某ホラー映画のイメージが強くて。
ただ、こんなふうに比ゆ的な意味でも使います。
- The teacher hammered the information into the students' heads.
(教師は生徒たちの頭に情報を叩き込んだ)
strike と punch
- She struck him in the face.
(彼女は彼の顔を打った) - She punched him on the nose.
(彼女は彼の鼻を殴った)
- strike: 手や道具で打つ
- punch: 拳で打つ
strike などは、攻撃的に「殴る」より、「人が何かにぶつかる」だったり「物が人に当たる」という意味での「打つ」のほうがよく使われるかもしれません。
(引用・参照元: Peanuts, Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary, Online Etymology Dictionary)